「開物叢説 石鹸」 補足情報

「開物叢説 石鹸」に関連する情報を記載していきます

4-1. 鹸化

鹸化(けんか)

もともとは油脂、ロウからセッケンをつくる反応をいっていた。すなわち油脂、ロウを水酸化アルカリと処理すると次式に従ってセッケンとグリセリンまたは高級アルコールとを生成する。

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しかし更に広く油脂を加水分解してグリセリン脂肪酸とを得る反応、あるいは脂肪酸を炭酸アルカリなどで中和してセッケンをつくる反応をも含めてケン化とよぶようになり、更に意味が広くなって一般にエステル類が水によって分解してカルボン酸とアルコールを生成する加水分解反応をケン化というようになった。

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この場合、通常水のみでは反応がおそいので、酸またはアルカリを触媒として用いる。酵素もまた触媒の中に含まれる。アルカリによるケン化の促進作用は一般に酸に比べて非常に大きいのでアルカリ性ケン化が最もよく用いられる。しかしこの場合反応生成物はカルボン酸のアルカリ塩になるので通常アルカリとして水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを理論量の3倍程度用い、溶媒としてアルコールまたはアルコールと水の混合溶媒を用いて30分~1時間程度煮沸する。ケン化しにくい油脂の場合には高沸点の溶媒を用いることが多い。酸性ケン化は工業上油脂からグリセリンを製造する場合などに用いられる。[以下省略]

化学大辞典3, 縮刷版第28刷, p420-421(1984), 共立出版株式会社

4-0. 石けん

石鹸(せっけん)

広義には脂肪酸の金属塩の総称であるが、最も普通にはナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩をさす。アルカリセッケンは更にその硬軟によって硬セッケンと軟セッケンとに分けられる。そのほかの金属塩は大部分が水に不溶性であって、これらは金属セッケンの名で区別されている。なお脂肪酸と類似性をもつ樹脂酸、ナフテン酸の塩類もセッケンとよばれる。アルカリセッケンは水溶性で著しい表面活性を示し、安定なアワを生じ、大きい洗浄力を持っている。低濃度では真の電解質溶液の性質を示すが、臨界ミセル濃度では急激にミセルを形成し、この濃度以上ではコロイドとしての性質を示す。水溶液は一部加水分解してアルカリ性を呈する。次にセッケンをその成分、用途、性状および製法により分類すれば次表のようになる。おもなセッケンの成分、特徴、用途などについては、それぞれの項目を参照。

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化学大辞典5, 縮刷版第36刷, p340-341(1997), 共立出版株式会社